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第5回:特発性(とくはつせい)正常圧水頭症(iNPH)をご存じですか?治る可能性のある認知症

超高齢社会を迎え2025年には認知症が実に730万人になると推定され社会問題となっています。認知症は治らないと言われていますが「改善する認知症」もあるのです。


「改善する認知症」の一つが正常圧水頭症です。何らかの理由で(だから特発性といいます)(脳)に(脳脊髄液)が過剰であるために認知機能低下、歩行障害、排尿障害などが生じます。


ここに残念なデータがあります。平成29年調査で一般市民の9割が「正常圧水頭症を知らない」という結果でした。更に正常圧水頭症でありながら手術の恩恵にあずかった方は約1%に過ぎないという報告もあります。診断、治療は日本がリード、情報発信しています。是非とも国内での認知度が上がって欲しい疾患です。


どんな症状?


  1. 歩行障害(94〜100%)小刻み、歩幅が広い、すり足、一歩目がでない、転倒しやすいのが特徴です。転びやすい高齢者が実は正常圧水頭症ということもあります。
  2. 認知障害(78〜98%)集中力、やる気がなくぼーっとしているのが初期の特徴です。
  3. 排尿障害(76〜86%)回数が増える。失禁する。


この3症状が特徴ですが、すべてそろわなければいけないわけではありません。


どうやって診断する?


先ほど挙げた症状から正常圧水頭症かもしれない?と疑うことが第一歩です。髄液の貯まり具合に画像上の特徴がありますのでまずは脳のMRI、CTをお受けいただきます。(脳血管障害、脳腫瘍、慢性硬膜下血腫という他に認知症を起こす原因が見つかることもあります)。症状、画像だけでほぼ診断確定することもあります。


髄液排除テスト(タップテスト)


最初に「何らかの理由で脳に水(脳脊髄液)が過剰である」のが正常圧水頭症とお話ししました。であるならば、「脳脊髄液が過剰でない状態をつくり出せばよくなるのでは?」その通りです。一時的に背中から針をさして髄液を抜き、「一時的に脳脊髄液過剰が改善された状態」にして、その前後で症状が改善するかどうかを見るのです。



治療方法は?


明らかな改善が認められれば、次は「一時的ではなく、いつも髄液過剰が改善された状態をつくり出せばよい!」のです。その目的にシャント手術を行います(図3)。「シャント(shunt)」とは透析でも用いられる言葉です。液体を異なる通路に流すという意味です。過剰な脳脊髄液を、脳の髄液部屋(脳室と言います)または腰椎から皮膚の下に通した細い管から主にお腹の中(腹腔)に流してあげるのです。「ダムの水位を一定に保つための配管増設工事」といったところでしょうか。全身麻酔で1〜1.5時間です。


ここで大切な事があります。時間が経って症状が進行してしまうと「同じ手術をしても効果が期待できない」のです。早期に診断して、診断がつけば早期に手術するのが大事です。

手術の後は?

太ってしまうと髄液の流れが悪くなることがあります。運動を心がけて、引きこもることなく活動的な生活サイクルを周りの協力も得て続けることが重要です。

iNPH ウェブサイト http://www.inph.jp

高齢者の水頭症コールセンター 0120−279−465(つなぐ よろこび)(平日8:00-20:00)

などを利用されるのもよいと思います。